1970年に設立された大阪小児科学会は、50年近い歴史を持ち、学術集会の開催は220回以上にのぼる伝統ある学会です。まさしく本学会は、大阪の小児医療・医学を支えるための中心的役割を担ってきました。この度、この伝統ある大阪小児科学会の会長に就任し、会員の皆様とともに本学会を運営させて頂くことになりました。これまでの活動に対して、諸先輩方のご尽力に改めて敬意を表しますとともに、これからも充実した活動を行っていくことの重要性を痛感し、身の引き締まる思いでおります。200回記念誌の資料を拝見しますと、本学会の初代会長は、大阪大学元教授の薮内百治先生であり、学会の発足にあたり高い目標を掲げるとともに、実際の運営には細やかな配慮をされたようです。その後の歴代会長の西田勝先生、岡田伸太郎先生、山野恒一先生、永井利三郎先生、新宅治夫先生にもご尽力いただき、大阪小児科学会は大きく発展してきました。私も、浅学非才の身でありますが、本学会の一層の発展のために力を尽くしたいと思います。
大阪小児科学会は、在阪5大学のみならず、さまざまな立場の会員の皆様のご協力により民主的に運営されています。本学会はこれまで、運営委員会、小委員会、学術集会、こどもの健康週間シンポジウムなどの活動を通じ、小児医療・医学に関する情報の発信と、本領域の発展に貢献してきました。特に、学術集会においては、特別講演、教育講演、シンポジウム、一般講演などを通じて小児科医の学術的知識のupdateに貢献してきたと考えています。本学会の学術集会は、若手医師の最初の学術発表の場となることが多く、若手医師の教育にも寄与してきました。小児科医の人材育成は、今後も大阪小児科学会の活動の大きな柱となると思います。新しい専門医制度においては、論文の作成が必須の資格要素となっています。論文の査読や編集作業は、多忙な日常業務の中では負担とはなりますが、大阪小児科学会の運営委員や在阪5大学の関係者の先生方には、積極的に関わっていただきたいと考えています。
50年の歴史の中で、子どもを取り巻く環境は大きく変化しています。小児人口の減少はもっとも分かりやすいものですが、それだけではありません。ワクチンや適切な標準医療の推進により、重症化する小児患者は減少していると思います。一方で、虐待や低出生体重児の増加と言った問題もあります。医師側の環境変化としては、女性医師の増加やワークライフバランスに対する意識の変化ということが挙げられます。大阪小児科学会は、このような環境変化に対しても柔軟に対応し、最良の解決策を見出していけるように活動していく必要があると考えます。会員の皆様とともに、子どもたちの健康のために力を尽くしたいと思います。 |