5歳児健診とフォローアップ体制について
講師:小枝 達也 先生(鳥取県立総合療育センター 院長代理)
1.「5歳児健診の始まり」
20世紀の終盤頃は、落ち着きがなかったり、こだわりが強かったり、指示に従わなかったり、忘れ物が多かったりという行動がみられる幼児は、学習障害(LD)リスク児だということが本に書いてありました。当時のLDは今の発達障害に近いくらい広い概念でした。私はLDの臨床を典型的なディスレクシアのお子さんから始めましたので、こうした説明に大いに違和感を持っていました。
そこで、当時LDリスクといわれた幼児の集団を作ってコホート研究をしました。その結果、まったく同じように見えていた3歳半から4歳半の幼児が、小学2,3年生では、軽度の知的障害の子が30%、いまの発達障害と判断される子が35%、そして定型発達と思われる子が35%であることが分かりました。私にはこれがとても衝撃的でした。「早すぎる診断ははずれる!」ということを肝に銘じました。
一方でADHDやLDと診断されている小学生の調査をしたところ、すでに60−70%のお子さんが、心身症の合併、対人関係の問題、睡眠の問題、不登校や保健室登校などの学校不適応といった二次的な問題を抱えていることもわかりました。「学齢期で気づいては遅すぎる!」ということも私にとっては衝撃でした。「3歳児健診では早すぎる、学齢期では遅すぎる、ならば5歳児健診でしょ!」というのが5歳児健診を始めた動機なのです。
2.「5歳児健診の意義」
鳥取県で5歳児健診をやってみると、3歳児健診で気づかれなかったADHDやASDのお子さん、さらには軽度の遅れのあるお子さんに気づくことができました。発達上の課題を指摘されたお子さんの95%は、通常学級に入学しています。明るく楽しく元気よく学校に行くための健診が5歳児健診なのです。