「デジタル視聴と子どもの神経発達」
講師:土屋賢治 先生
(浜松医科大学子どものこころの発達研究センター、大阪大学大学院 大阪大学・
金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科)
子どもたちにとって、デジタル視聴は生活の一部になっています。この講演でお伝えしたいのは、デジタル視聴を「敵視」し「ゼロにする」ことではありません。デジタル機器と上手に付き合うため、子どもまかせにせず「大人がかかわる」必要性を説きます。
デジタルコンテンツは、魅力的に作られています。
おすすめ機能にしたがえば無限に楽しく見続けられます。子どもひとりの意思だけで抜けられないのは当然です。一方、長時間のタブレットやスマホ視聴が、ことばの発達や注意機能の成長に影響し、近視や睡眠不足をもたらす可能性があることを、多くの研究が示しています。視聴時間の長さを心配したくなるのは、子どもを見守る大人にとっては当然のことです。
米国小児科学会は2026年1月、子どものデジタル視聴について声明を発表しました。
「長さ」ではなく「見方」に目を向けよう、というものです。
たとえば、子どものそばで大人が言葉をかけながら見る「共視聴」では、視聴時間が長くとも子どもへの影響は少なくて済みます。大人向けの刺激の強い映像にくらべて子ども向け映像では影響が小さくなります。食事前のやめにくいデジタル視聴には、大人が子どもの正面に回って「ごはんだよ!」と微笑みかけることで、やめるきっかけができます。つまり、声明は「デジタル視聴の長さ」だけを問題にするのはやめよう、それよりも、「デジタル視聴の質や中身」を考えよう、質や中身をととのえるために大人はなにをすべきかを考えよう、といっているのです。
わたしたちは、デジタル視聴と外遊びの関係に注目しています。
デジタル視聴が増えると外遊びが減ることが分かっています。外遊びを増やすと子どもにいいことがあるでしょうか。研究結果によれば、2歳以降によく外遊びをすると、デジタル視聴の時間の長さによらず、4歳での発達によい影響があらわれていました。さらに、世界の研究は、子どもが外で日光を浴びる時間が長いほど近視になりにくいことを示しています。公園での遊び、散歩、スポーツを大切にしていただきたい理由が、ここにあります。
家庭、幼稚園・保育園、学校でできることは何でしょうか?
大人がムキになって見せないようにするのは、決して得策ではないでしょう。まずは、デジタル機器をつけっぱなしにせず、見るときは内容について声をかけあうこと。天気のよい日は外で過ごす時間を作ること。この積み重ねが、子どもたちの発達、さらには目の健康を守ってくれます。やめどきがむずかしい子どもに対しては、子どもだけにがまんさせず、「大人と一緒にやめる」という作戦があります。「グレースケール」「おうちWi-fiオフ」「通知オフ」「推奨機能オフ」など、いまできる小さな一歩を一緒に考えてみましょう。